ふるさとは遠きにありて思うもの。
当たり前にそこにある人も景色も食べ物も、一度手を離せばこそまぶしく、有り難さや価値を認識できるようになることがあります。
山梨はフルーツ王国。季節がくれば、当たり前に家中に桃やぶどうがあふれるというのは、他所の土地の人にとっておどろきの光景です。
AmiNature(アミナチュール)の向山浩太さんは、フルーツがあふれる山梨の日常と、産地のおいしいフルーツを素材にしたドライフルーツをつくる、ドライフルーツ職人。
彼らのつくる完全無添加のドライフルーツは、健康や美容にも良いと、高い関心を集めています。
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向山 浩太(むこうやま こうた)
大学で上京し、東京で就職。 “農業に携わりたい”という思いから、31歳の年にUターン。実家の畑を手伝いながら起業する。屋号を「AmiNature(アミナチュール)」とし、山梨のフルーツを用いた完全無添加のドライフルーツづくりを行なっている。
株式会社アミナチュール公式Website:https://shop.ami-nature.com/
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山梨だからできること
笛吹市にあるAmiNature(アミナチュール)は、山梨のフルーツの可能性を広げる会社です。
山梨県は四方を山に囲まれた地形が特徴。その扇状地に位置する笛吹市は、豊かな土壌に恵まれ、古くから果物の栽培が盛んでした。現在も、桃・ぶどうの産地として日本一の生産量を誇ります。
生産量(数字)もさることながら、多くの人を圧倒しているのはその品質(味)の良さ。農家の人が、一つひとつ丁寧に手作業で仕上げるフルーツは、たくさんの人を感動させています。
ドライフルーツの研究
大学進学の際に上京し、就職した企業ではプロジェクトリーダーとして自動車開発に関わるなど、大きな仕事を経験。その後、31歳の年にUターン。
「父の体調不良がタイミングではありましたが、もともと戻ってくるつもりだったんです。僕は自分が生まれ育ったこの土地の景色や環境がとても好きで、この景色と環境を残したいと思っていました」
向山さんは畑を手伝いながら、個人事業主として自分にできることを探します。
「自然や畑を生かしたいと思い、最初に挑戦したのが『リクエスト栽培』です。栽培の代行なのですが、山梨を“ちょっと離れた広い庭”とイメージしていただき、依頼を受けた作物や植物を栽培しようとしました。でもあまりうまくいきませんでした」
その理由でもあったのが、“土地が良すぎる”ということ。
「ハイビスカスを育てて欲しいと依頼を受けたんです。けれど、実るまでに3年。ハイビスカスを育てるには、山梨の土壌は肥沃すぎました」
並行して研究を重ねていたドライフルーツづくり。きっかけは「こんなに美味しい桃を一年中食べられたらいいのに」という奥様の一言でした。
現在AmiNatureでは、桃・キウイ・いちご・ピオーネ・渋柿を中心に、山梨で採れるフルーツを生かしたドライフルーツを生産しています。
「まだまだ試行錯誤をしながら作り続けています。一番難しいのは桃。手で触って乾き具合を確かめるので、共通の認識を持っておかないと味が安定しません。スタートから5年。やっと自分の納得いく形が出来上がってきたと思っています」と向山さんは笑顔を見せます。
AmiNatureのドライフルーツは、フルーツをカットする大きさや厚さから、乾燥時間など、仮説と検証を繰り返して“おいしさ”を追求した、ここにしかないレシピ。
「まずはフルーツを最高に美味しい状態にすること。あとは完成形のインパクトを考えてドライフルーツにします。ドライフルーツにするフルーツは、採れたものを無駄にしないようにとキズものを用いることもありますが、日本一の産地の素材。味は抜群です。この贅沢なフルーツの使い方は、山梨だからできることだと思います」
“果物発進”のプロダクト
「始めた頃は水道すら引いていませんでした。この場所(生産所)も今年の夏に作ったものです」
現在は、年間約500キロのドライフルーツを生産。周囲の農家さんから「うちのフルーツも使ってほしい」と声をかけられることも多くなりましたが、対応仕切れていないのが現状です。
「僕たちのドライフルーツは地元のスーパーや施設、インターネットで販売をしているほか、近所の神社でお宮参り用に奉納させていただいていたりもします。けれど、つくりたいのは、今の10倍の量です。
僕らのような世代が、新しい活動をすることで地域活性化にもなると思います。それと、新しくても、けむたがる人がいないのは、“誰かやってくれたらいいのにな”と思うような地域に根ざした活動だからだと思うんです。
農家生まれの僕は農家さんの感覚も分かりますし、東京に長く住んだ分都会の人たちの果物に対する感覚も分かる。山梨がどれほど資源豊かな土地か、改めて有り難さを感じる日々です」
守りたい環境と、伝えたいフルーツのおいしさ。
「山梨は本当に資源が豊富。ここにしかないもので、いいものをつくれば、いろいろなチャンスがあると思います」と向山さん。
何を発信するかは、そこにあるものを見つめること。
どうすれば見つけてもらえるかを考えることは、世の中を見つめること。
山梨を生かす“果物発進”のプロダクトは、今後より多くの人に届いてゆくのでしょう。
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