和太鼓の音色は日本特有のもの。かつては「合図」のように用いられていた和太鼓は、今や「日本文化」「芸術」とも称されるようになりました。笛吹市の「天雷太鼓」は、かつて武田信玄が戦の際に、武士の士気を鼓舞するために打ち鳴らしたものだそう。その音が、長い時を経て復刻されたのは昭和58年のことでした。
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天雷太鼓保存会
会長 梶原 保男(かじはら やすお)
東京に上京し数年後、ご両親がはじめた「季節のお宿ひみね」を継承するため山梨へUターン。天雷太鼓保存会発足初期のメンバーであり30年以上に渡り会長の役職を担う。地元行事のほか、県内外、そして海外に演奏の場を設けるなど、精力的に披露の場を広げてきた。
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ふるさとづくりの一環として始まった「天雷太鼓」
天雷太鼓のはじまりは、昭和58年。笛吹市御坂町の有志が集まり「町がひとつになれるようなことはできないだろうか?」と話している中で「和太鼓」が浮かび上がりました。
「当時集まった有志の中に和太鼓経験者はいませんでした。そこで当時のメンバー12、3人で長野県諏訪市の「御諏訪太鼓保存会」に弟子入りをしました。泊まり込みで指導を受け、笛吹市にその技を持ち帰り、残りのメンバーへ共有。和太鼓の基礎を一通り学び、そのあとは自分たちで指導者を招きながら練習を続けました」
と聞かせてくれるのは、天雷太鼓保存会会長の梶原保男さん。梶原さんは、保存会発足時からのメンバーのひとりです。
「『季節のお宿ひみね』を継ぐために東京から戻り、自分はいわばUターン。育った地域とはいえ、笛吹市との繋がりがありませんでしたので、地域住民との繋がりを持ちたいと思っていたんです。その時に、このお話がありましたので、ぜひ参加をしようと加わりました」
以来、メンバーを募ったり、和太鼓の演奏を披露する場をつくったりと天雷太鼓保存会の活動を牽引し続けてきました。
近隣の地域からもメンバーが加わり、30年以上続く活動について
天雷太鼓保存会のメンバーは現在50名ほど。女性や子どもが多いことも特徴で、笛吹市を始め、山梨市や甲府市から参加している人もいるそう。
「子どもさんが多いというのは、この地域の特徴かもしれません。この辺りでは保育園や幼稚園の年中・年長クラスになると和太鼓に触れる機会があります。けれど、小学校にあがると和太鼓の時間は無くなります。そんな中、和太鼓を好きになった子どもや、続けさせたいと思った親御さんが、卒園後にうちのチームを自然と訪れてくれるんです」
『やりたい』と思った時に、環境があるのは素晴らしいこと。天雷太鼓の活動が30年以上無理なく続けられているのは、メンバーが皆“和太鼓好き”であることも大きいと梶原さんは聞かせてくれます。
「新メンバーの加入後、最初に全員に教えることは礼節・礼儀作法。太鼓をたたく姿勢や、礼で始まり礼で終わる作法などは大切にしています。やはり、日本の文化ですからね」
天雷太鼓保存会は、太鼓の技術はもちろん、人間的な成長をも促してくれる場としての期待も背負っています。
振りで魅せる、音で聴かせる
天雷太鼓の名前の由来は、天の太鼓打たずして自ら妙音を発し雷鳴を轟かせ大地を揺るがす雷の音“天鼓雷音”から「天雷太鼓」と命名され、そしてその音色は太く鋭いのが特徴。かつての戦国武将「武田信玄」が戦に向かう際に打ち鳴らしたものとの伝承があります。川中島の合戦の際にも鳴らされた太鼓であり、昨今の披露の場では梶原さんらによってその音色が再現されています。
そのほか、披露の場は県内外で多数。各地で公演することについて、梶原さんは次のように聞かせてくれます。
「練習をするからには、やはりたくさんの人に聴いてほしいもの。今は地元のお祭りはもちろん、市内・県内を中心に演奏活動を行なっています。太鼓の音色を聴いてもらいたいのはもちろん、パフォーマンスも見てほしいですね。“振り”がまたカッコいいんですよ。笛や鳴り物などバラエティーに富んだ和楽器の登場もあります。目をつむって音色を、目をあけると振りもあるという、エンターテイメント。音色と振りが一つになってこその、和太鼓です」
また、最近は海外メディアの取材を受けることもありました。
「ドイツのメディアの方が訪れ、実際に太鼓を鳴らしてもらいました。太鼓には日本特有のリズムがありますので、海外の方には少し難しいもの。けれど、とても気持ちよさそうに演奏して下さいました。技術は様々ありますが、私たちのチームでは楽しく演奏してもらうことが一番。和太鼓の楽しさを海外の方にも経験していただく、いい機会になったと思います」
音が一つになる快感。数キロ先まで“飛ぶ”音色
梶原さんに和太鼓の面白さを聞いてみると、回答はとてもシンプルなものでした。
「一つにまとまることです。10人が一緒に一つの音を出す。その迫力と力強さ、皆さんに聴いてもらいたいポイントでもありますが、演奏している方も気持ちがいいものです」
その音色は、数キロ先まで響くそう。
「保存会結成30周年の際には、海外(シンガポール・台湾)でも演奏させていただきましたが、やはり海外の方からも『迫力』について評価をいただきました。数キロ先まで飛び、腹に沁みるような音色がやはり和太鼓の特徴ですね」
28歳の時に和太鼓をはじめ、それから30年以上が経った今。梶原さんはこれからもチームと、和太鼓仲間と、演奏を楽しみたいと言います。
「和太鼓をやってみたかったらできる場所があるというのは、子どもたちにとっても、大人にとってもいいことだと思うんです。演奏は楽しく、規律はきちんと。それが天雷太鼓。見るよりも、実際に演奏をした方が楽しいのも確かですから、ぜひ仲間に加わってくださいね」
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\梶原さんに会いに行ってみよう!/
住所: 笛吹市御坂町上黒駒4890‐1
電話番号:055‐264‐2729
練習日: 毎週火曜日
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