「甲州(ブドウ)がそこにあったから」というほど“必然的”にはじまった山梨のワインづくり。ワイナリーとしてはめずらしい「工場」を併設する笛吹市のモンデ酒造は、時代のニーズとともに変化を続けるワイナリーです。「飲む人を想いながら」と、時代に合わせたチャレンジを続け、私たちの食卓に寄り添うワインをつくり続けています。
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モンデ酒造
営業部 営業一課/課長 竹内 勇(たけうち いさむ)
製造部 醸造責任者 水上 東(みずかみ あずま)
モンデ酒造は1952年の創業以来、笛吹市に根ざして進化を続けるワイナリー。ワイン、リキュール、ブランデー、清涼飲料水など、“山梨”の魅力がつまった様々な製品を手がけている。中でも特徴的なのが、10年ほど前からはじめたという缶ワインの製造・販売と、ワインを瓶や缶に詰める工場の見学ができること! 「美味しいワインをつくり、届けることはもちろん、笛吹市の観光拠点としても貢献できれば」と醸造責任者は語る。
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古くからワインが生活の一部だった地域
「作りたくて作り始めた、というよりも、そこに甲州種のブドウがあったから。山梨のワインづくりは、“必然的”にそれが始まったものと言えると思います」
と、モンデ酒造醸造責任者・水上東さん。
水上さんは自宅でも毎日ワインを飲むというほど、ワインへの愛情が深い方。
ワインで有名なフランス・ボルドー地方にあるボルドー大学を踏襲したカリキュラムで、ワインについて深く学ぶことのできる山梨大学のワイン学科へ入学し、知識に磨きをかけ、醸造にまつわることはもちろん、ブドウの栽培からテイスティングまで深い造詣をもっています。
「会社の業務終了後、授業に通っていました。笛吹市にとってワインは地域を盛り上げる大事な産業のひとつです。せっかく携わるのであれば、素晴らしいものをつくりあげたいと思っていました」
ワインは花、果物、宝石と並ぶ山梨の地場産業。生産量だけでなく、消費量も日本一というほど、山梨の暮らしとワインは密接な関係にあります。
「一升瓶のワインを湯のみで飲む、というのが山梨のワインの飲み方。その昔、ブドウを長期保存できるブドウ酒にしていたことからワインづくりが始まったんです。山梨県にとって、ワインは生活の一部であり、文化と言い換えることができるでしょう」
1日に6万本。缶ワインのニーズと工場見学
一日に約6万本を製造するモンデ酒造の生産ライン工場。コンビニやスーパー、駅のキヨスクなどで販売されている「ワイン缶」は同社が約10年前に始めた事業です。
「どうして缶か、というのは、もっとワインを気軽なものにしたいなと考えていました。瓶は捨てづらく、重い。一方で缶は、とてもカジュアルでエコなイメージがあります。手に取りやすいのは、後者ですよね」
と竹内勇営業課長がマーケティング的な視点で語ると、
「缶であることで、飲み方が変わります。飲むシチュエーションがボトルのワインよりも広がるのではないでしょうか。缶にすることで味に変化は?ということを時々聞かれるのですが、缶の特性に合わせて美味しく飲める工夫を重ねながら、瓶詰めワインと変わらない味を実現しています」
と、水上さん。缶ワインは発売以来売り上げをのばし、現在は海外から依頼もあるそう。
「特にスパークリングワインの引き合いが多いですね。缶ワインはその気軽さから、ニーズの広がりを感じています。忘れてはいけないのは、食の安心・安全と品質管理です。私たちは充填技術においてワイナリーとしては珍しい『ISO22000*』をいただいています」
*ISO22000=食品安全マネジメントシステムに関する国際規格。
「弊社では、訪れてくださった皆さまへ、生産ライン工場の見学をご案内しています。工場見学はほとんどの方が満足してくださる人気のアトラクションで、瓶詰めや缶詰めのラインが日々稼働しているというのは、他のワイナリーにはない、弊社の大きな特徴です」と竹内さんが同社の魅力を教えてくれます。
現在、モンデ酒造では、SNSで話題のアプリゲーム「夢王国と眠れる100人の王子様」とのコラボイベントを開催中。ここでは、同ゲーム内で使えるオリジナル特典を手に入れるため、ゲームユーザーがスマホを片手に訪れ、アプリでQRコードを読み取る姿が多く見られます。
幅広いターゲットに向けて画期的で遊び心のあるイベントも実施しているモンデ酒造。実施を担った竹内さんは、
「おそらく昨年の業績を評価いただき、旅行会社さんからお声がけいただきました。昨年の実績というのは、遠方から電車で訪れてくれた方がいらっしゃったり、売り上げが伸びたりというものです」
と話し、一人でも多くの方に喜んでもらうべく、イベントパネルやのぼりを用意し、ポスターの配置を工夫したりと、日々お客様をお迎えしています。
いつもの食卓に添えてほしい……。モンデ酒造の願い
ワインと料理を合わせるペアリング。醸造責任者の水上さんも「ワインと料理を合わせると1+1がもっと大きくなる」と聞かせてくれます。
「例えば甲州ブドウを用いた白は、レモンのような酸味が特徴。和食の焼き魚や湯葉などとも相性が良く、もちろん普段レモンを振りかけて食べるような料理ともよく合います。マスカットベリーA(日本が誇る生食用かつ醸造用の黒ブドウ品種)を用いた赤ワインであれば、土着の料理とマッチ。その他、鳥モツのクリーミーな味噌と合わせればタンニン(ブドウに含まれるポリフェノールのひとつで渋み成分のこと)が流れ、とてもおいしくいただけます。どちらも料理に寄り添いながら下支えとなるようなワインに仕上がります」
もともと一升瓶のワイン(ぶどう酒)を湯のみで嗜むほど、山梨の生活に浸透していたワイン。
「私たちが届けたいのは『つかれないワイン』。いつもの食卓に上げてほしいと願っています。だからこそ、香りも、口に含んだ時の印象も、また余韻にも、バランスを重視し、親しみやすいワインを目指しています。山梨のワインは、近くにつくり手がいる、顔の見えるワインだからこそ、つくり手のスタンスが滲むものだと考えています。だからこそ、個性があって面白いんですよ。ワインのことを難しく考えないで、もっと気軽に楽しんでほしいと思います」
自分の好みを知るには、やはり飲み比べてみるのが大切なのだそう。
「味の違いがわかるように、など難しいことは言いません。ただ、自分の好みの物差しを保つためにも、いくつものワインを飲み比べてみてほしいです」
ワインをもっと身近に……。モンデ酒造の挑戦は、これからも続きます。
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\モンデ酒造へ行ってみよう!/
店舗名: モンデ酒造
住所: 笛吹市石和町市部476
電話番号: 055-262-3161
営業時間: 8:30~17:00(12月31日のみ休日)
※モンデ酒造では随時工場見学(無料)のお申し込みを受け付けております。
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