小銭を握って訪れれば、小さなビニール袋がすぐにいっぱいに。駄菓子は、大人も子どももワクワクさせてくれる日本の文化です。
御坂中学校の目の前にある「久保田文具店」は、戦後からその場所で地域の子どもたちとやわらかく関わりながら存在してきました。
店頭に立つのは、久保田よしのさん、86歳。よしのさんのご主人がはじめ、時代とともに“売るもの”を少しずつ変化させてきたという小さな文具店。その一つの名物に「駄菓子」があります。
「店が閉まっていれば、店を開けてくださいよと子どもたちがノックするんです。やめられないですよ」とよしのさんは嬉しそう。
今も昔も、人々が求め続けるお店。そのやわらかな在り方に触れてきました。
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久保田 よしの(くぼた よしの)
久保田文具店の店頭に立つ、やさしいお母さん。子どもをいつも見守っていてくれる存在としても知られ、「久保田さん、うちの子大丈夫でしょうか?」と親御さんから相談を受けることもあるそう。久保田文具店は「レミオロメン」も通った駄菓子店として、ファンの間でよく知られている。
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時代とともに、緩やかに形を変える商店
「久保田文具店」は、御坂中学校の目の前にある小売店。目立つ建物ではなく、目立つ看板もないけれど、地域の人によく知られ、地域の子どもたちに愛され続けている小さな店です。
「おじいさんがね、はじめたの。おじいさんは東京の人で、戦争の時に疎開してきて、戦後にこの店を開きました。おじいさんはテレビを作るような技術を持った人だったんですよ。だから、半分電化製品、半分文房具。あとは細々としたものを置いている『なんでも屋さん』でした」
そう話すのは、毎日店頭に立つ名物店主・久保田よしのさん。「今でいうコンビニみたいなお店でしたよ」と息子の直輝(なおき)さんが付け加えます。
電気と文房具のほか、プラモデル、ラジコン、エアガン、野球道具や釣り道具に半紙。インベーダーゲームを店内に置いていた時代もあったそう。
「何を売っても売れた時代があったんですよ」
とよしのさんは懐かしそうに話します。
「ここの店の駄菓子」
「日曜の早朝にトントンと店の入り口をノックする子どもがいるんです。『開けてください』って。そんな風にきてくれたら、閉めていられないじゃんね」
久保田文具店は、基本無休。それも、「学校へ行く前に寄る学生もいるから」と、朝7時前には店を開けているそう。
「放課後や夏休みには、隣の駐車場が学生の自転車でいっぱいになりますよ。最近驚いたのは、海外の方が訪れるようになったこと。こんな小さな店なのにねえ」
久保田商店の客層は時代とともに変化。昔は子ども一人で小銭を握って訪れていたけれど、近年は家族が増加。「パパも子どもの頃、ここの店でこれを買って食べていたんだよ」と親が自分の子どもに伝えるシーンもよく見られるそうです。
ところで駄菓子にはシーズンがあって、夏と冬で店頭に並ぶラインナップは大きく変わるそう。
「夏場はチョコが減って、ひんやりした食べ物が増えるんですよ。それでまた9月頃になると冬の商品が並ぶんです」
ロングセラーの商品もパッケージがマイナーチェンジしていたり、お値段はそのままでも内容量が少し減っていたり。気づかれないほど小さく、けれど時代により寄り添う形に、駄菓子は変化を続けているようです。
「これだけの品物がありますから、覚えるのは大変ですよ。お会計はずっと暗算でしていました。計算途中で『これいくら?』なんて聞かれて忘れてしまうことが増えましたので、最近は電卓も使い出しました。けれどまだ、500円くらいまでだったら暗算の方が早いですよ。友達にボケないからいいね(笑)なんて言われたりしてね」
とよしのさんは笑います。
駄菓子、探訪
昔はたくさんあったけれど、今はわずかになった駄菓子店。
「うちは自然の流れで、色々やってきた中で『駄菓子』が残りました。駄菓子というのは、利益は低いんだけど、子どもが好きだから。だから続いているんだと思います。今はコンビニでだって駄菓子は買える時代。それでも「やっぱりここの店で買いたい」って来てくれる人がいますから」
よしのさんは、子どもたちと触れ合うことで元気をもらい、癒されているのだと言います。
色とりどりで細やかな駄菓子と、チャーミングなよしのさん。久保田文具店は、初めて訪れてもなぜかどこか懐かしい……。「会いに行きたくなる」町の駄菓子屋さんと言えるでしょ
う。
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\久保田さんに会いに行ってみよう!/
店舗名: 久保田文具店
住所: 笛吹市御坂町下野原1231-11
電話番号: 055-262-5387
営業時間: 7:00~19:40
定休日: 年中無休
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